最近知り合いから聞いた話です。
同僚が最近結婚したとのことです。最終的には、マッチングアプリで出会われた方と結婚されたそうですが、お相手に出会われるまでには相当「苦しみました」と話していたそうです。
成功したからこそ「苦しんだ」と言えるのかもしれません
苦しみは無いに越したことはありません。
ではなぜ「苦しみ自慢」とも思える発言をするのでしょうか?
成功したことをより引き立たせるために「苦しんだ」と言っているのかもしれません。
「苦しみ」を乗り越えて「成功をつかんだ」とアピールすることで、周囲からの畏敬のまなざしを期待しているからかもしれません。
つまりは「自分をより引き立たせるためのレトリック、修辞」を使っているから、かもしれません。
もしくは、うまくいった現在からみれば、「苦しんだ」ことは過去のことなので「苦しんだからこそ成功した」という考えが強化されているのかもしれません。
「苦しんで成功した」=「苦しまなければ成功しない」という考え方を持っていても、自分はすでに成功しているので、これから先は「経験した苦しみ」を予想しなくて済みます。
あくまでも「予想しなくて済む」ではありますが。
少しひねくれた見方のように思われるかもしれません。書いている自分でもそのように感じます。
ヴィパッサナー瞑想(マインドフルネス)では「欲」をかなり広くとらえます。
五感で感じて心地いいもの、続けて楽しいみたいという気持ちを「欲」としてとらえます。
その様に見てゆくと「人間は自分が心地良いこと、自分が満足する行動、方法を選択する、それが時には周囲から非合理的に見えても」という風に考えることもできます。
すでに成功している人にとっては、「苦しんで成功した」=「苦しまなければ成功しない」という考え方を披露して、それが周囲からの畏敬を得られることで、「自分が心地良い、自分が満足する」と予想するのであれば、苦しみ自慢をすることに十分な動機があります。
何しろ自分は、もう同じ苦しみを味わなくてよいのですから。
そういうことではなくて「おめでとうといわれて」、「ありがとう。でもけっこう大変だったんだよ」と謙遜の意味を込めて言っただけかもしれませんが。
たぶん苦しんだのでしょう
お話のニュアンスから察するに、たぶん苦しんだのでしょう。苦しんで、それでもあきらめずに努力して、結婚をつかんだのでしょう。
しかし、あなたに役立つのは「苦しまなければ成功しない」という考え方ではなく、「苦しみの中から何を見つけ出し、成功したのか」ということのように思います。
周りで婚活に成功して苦労話をされた方がいらっしゃったら、その方に質問してみてください。
「結婚されたんですか、すごいですね。それでなにが成功のきっかけになったのですか?」
「成功自慢」でないからこそ、聞いてみる価値があります。
回答は、あなたに直接役立つものかもしれませんし、直接には役立たないものかもしれません。
しかし、それは致し方無いことです。
あなたとは別人格の他者のやり方が、あなたに役立つことの方が少ない、と考える方が自然です。
「あなた自身のリソース」を活用する、という方法を検討してみてもよいかもしれません。
「あなた自身のリソース」は、あなたが苦しんでいても「例外」的に「うまくやれていること」です。
SFAの考え方が役に立つかもしれません
SFAは、苦しんでいるクライアントの「うまくいっていること」に焦点を当てます。
SFAもしくはSFT、SFBTはカウンセリングの手法の一つです。
SFA Solution Focused Approach ソリューション・フォーカスト・アプローチ
SFT Solution Focused Therapy ソリューション・フォーカスト・セラピー
SFBT Solution Focused Brief Therapy ソリューション・フォーカスト・ブリーフ・セラピー
日本語では「解決構築」と、ややわかりにくい訳語が当てられています。「解決指向」と説明されることもあります。
「解決構築」という言葉の意図するところは、クライアント自らが解決方法をつくりだして、実施してゆく構造を作ってゆく、カウンセラーはそのための援助をする、ととらえていいように思います。
わかりにく訳語になってしまったのは、『「問題解決」アプローチ』との違いを示すためと思われます。
『「問題解決」アプローチ』とは、SFA以外の多くの心理療法アプローチ、「今クライアントに起こっている問題を、援助者(カウンセラー)が把握(診断、アセスメント)して、問題を特定し介入すればクライアントの問題は解決する」という方法論を指しています。
「解決を構築」するためにSFAは、「問題」に焦点を当てません。
「問題」に焦点を当てても、クラアントの行動の変化、クラアントの自己評価の向上につながらず、そのことが結局、クライアントの人生の質向上への意欲につながらない、と考えているからです。
クライアント(あなたと考えてください)は、カウンセラーに問題(不満)を説明して解消法を求めます。この段階の話は「プロブレム・トーク」です。
「プロブレム・トーク」はカウンセラーが、クラアントの活動、環境を理解するためには役立ちますが、抱える問題を改善するためにはあまり役立ちません。
カウンセラーは、「プロブレム・トーク」により、クライアントの活動、環境を把握したら、クライアントの「ソリューション・トーク」を引き出すようにします。
「ソリューション・トーク」は、「あなたの活動や環境、現在の結果に満足していないことはわかりました。そのような状況の中で、うまくいっているときはありませんでしたか?その時はどのような違いがあったのか教えてください」といった内容の質問により引き出されてゆきます。
「ソリューション・トーク」はクライアントを、次のような考え方へと導くためのものです。
- 「問題」に焦点を当ててもよい方向に行きません。
- うまくいっていない状態でも「うまくいっていること」が必ずあります
- あなたは状況に対処して少ないながら「うまくいっていること」を生み出しています
- 「うまくいっていること」は、あなたに状況に対処する能力があるということです
- 「うまくいっていること」から、あなたの状況を変える「解決構築」をしてゆきましょう
このように考えると、ようやく「解決構築」という言葉の内容が理解できます。
SFAのカウンセラーは「うまくいっていること」を見つけて、クライアントをコンプリメント(賞賛する、励ます)し、クライアントはエンパワーされ(力づけられ)ます。
「解決構築」が目指すゴールは、「あなたの希望する姿」ですから、カウンセラーは共同作業により「あなたの希望する姿」を作ります。
うまくいっていることに焦点を当てること、「あなたの希望する姿」をはっきりとさせることを通じて、解決への意欲を高めてゆくのです。
SFAの素晴らしいところ
SFAの素晴らしいところは、いったん「解決構築」の方向にクライアント(あなた)の意識が向かうと、カウンセラーの介入とはかかわりなく、状況が改善し始める、という見解に立っていることです。
SFAのカウンセラーは、カウンセリングセッションの終了時に「提案」をしますが、提案によりクラアントが好転するとは考えていません。
提案によってではなく、クライアント自身が持っている「うまくいっていること」=「例外」=「状況に対処してゆく力」を認識することができれば、クライアントは自分に解決策を作ってゆく力があることを認識して、自らが解決策を講じて、状態を改善してゆくことができる、と考えているからです。
3ステップで婚活を立て直す
SFAは、
- クライアントが抱える「問題」へ焦点を当てるのではなく、
- カウンセラーの質問により「クライアントが希望する姿」を明らかにし、
- 問題を抱える中でも「うまくできていること」(「例外」といいます)を探し、
- うまくできていることをコンプリメント(賞賛する)し、
- 「クライアントが希望する姿」に到達する「能力」があることを認識してもらいます。
仮に、「あなたが考えることにはエネルギーがある」と考えてください。ヴィパッサナー瞑想ではそのように考えます。
あなたの考えることに「エネルギーがある」とするならば、「うまくいかないこと=問題」を考えている場合は、そのエネルギーは「うまくいかないこと」に向かいます。
解決策があればあなたのエネルギーは、解決策の実施に向かうでしょうが、解決策がない場合は悲劇的です。
エネルギーはあなたの中にとどまり、時にあなた自身に「私にはできない」「もうあきらめたほうがいいかも」とっいった思考にエネルギーが向かってしまうかもしれません。
「うまくいかないこと=問題」を考えていると、あなたはうまくゆく方向には向かいません。
「あなたが希望する姿」「あなたにはそこに到達する能力がある」ということに焦点を当てれば、あなたのエネルギーは「あなたの希望する姿」に到達することに自然と注がれます。
婚活がうまくいかない、つらいとお感じの方はSFAの考え方を活用して婚活を立て直してみてはいかがでしょうか。
3ステップでご説明します。
ステップ1
うまくできていることを探して、自分で自分をほめてあげてください、励ましてください。
些細なことにも注意を向けてください。うまくできていることは必ずあるはずです。
うまくできていること、うまくできたことを見つけて、自分で自分をほめてあげてください。
これは「根拠のないポジティブ思考」ではありません。
セラピー(カウンセリング)の基本的な方法論です。
「できていること」「できたこと」はどんな些細なことでも「できた」と評価します。
一つのことが出来たら次の課題に、一つ一つ取り組み「できる」ようになってゆくことで、自分が望むところへ向かっている、そのことが実感できることで意欲と自己の効力感が増します。
意欲と効力感が増すことで自分が望むところへ到達する可能性は高まります。
人は「ゆまくゆかない」と「概念化」して考えて落ち込みますが、人は本能的に、ケガをした部分をいたわるような動き方をするように、「概念化」とは別の思考方法で「うまくできる」ように対処しています。
「うまいくできていること」をほめることで、自分に能力があることを感じることから始めてください。
「うまくいかない、何が原因なの」(問題解決指向)・・・と考えても気分が落ち込み、良い解決策は浮かんできにくくなります。
ステップ2
そして「自分が希望する姿」を作ってください。「自分が希望する姿」を、SFAでは、「自分が望む姿であって、現実的で実現可能なゴール」という意味で「Well Formed Goal」「よくできたゴール」と言います。
「自分が希望する姿」へ向かって行動するのでなければ、意欲はわいてきません。
「Well Formed Goal」を導き出すために、SFAでは「Miracle question ミラクル・クエスチョン」を使います。
「ミラクル・クエスチョン」とは「もし今晩、あなたが寝ていて知らない間に奇跡が起こって、あなたの問題がすべて解決したとしたら、何によって奇跡が起こったと理解できますか?、奇跡が起こった後のあなたは、今のあなたとどのように違っていますか?」というような質問によって(問題へ向いているあなたの意識をいったん止めて)、あなたがが望むものを明確化する技法です。
ステップ3
「自分が希望する姿」に到達するには、現在と「どのような違いをつくりだす必要があるか」を考えてみてください。
「どのような違いをつくりだす必要があるか」考えることが、あなたに変化をもたらすはずです。
あなたの内面の変化は、行動の変化となり、行動の変化は周囲の反応の変化をもたらし、あなたにもたらされる結果を変えてゆきます。
「意味のある変化は、あなたの心の中で生まれます。」
(上田紀行さんの言葉であったと記憶していますが、手元に本がないので確認できませんでした。)
あなたがしあわせでありますように
あなたの願いごとがかなえられますように